スピカのなんとか生きる日記

30代、男、ゲイ、毒親育ち、現在無職のなんとか生きる日記

全部、運

突然の連絡

久方ぶりの連絡、下のきょうだいから。
ラインだけは数年前にかろうじて知ることができたレベルの繋がり。
私には、二人きょうだいがいる。上のきょうだい、と、下のきょうだい。

オール異父。

長らく没交渉だった人からの連絡は、大抵何か臭うもの。

コンタクトの本旨は、やはり『最近どう?』とかではなかった。

下のきょうだいの父親が不慮の事故で数ヶ月前に亡くなった』、ということだった。
私の父ではないが、幼少期に数年間お世話になった方。

義父は真面目に休まず働き続けた人。
血のつながりのない私にも優しく接してくれた記憶が蘇る。
しばしば彼の職場にも連れて行ってもらった。
昔誕生日プレゼントに貰ったビデオも覚えている。ディズニーのファンタジア。

揉め事は嫌いで、仕事熱心だった人。
その優しさで、私を孤児院から引き取る契機となってくれた。

ありがとうございます。
どうか天国で安らかに、そして勝手なお願いですが、下のきょうだいを天国から守ってあげてください。

世の中不公平だ、なんでだ

なんで?
なぜ、真面目に生きる善人が不慮の事故で天に召されなければならないのだ?
悪人が蔓延る世の中で、なぜ彼?
真面目に頑張って生きるとは?
人にも優しかった、悪いことをする人ではなかったのに、なぜ?

神様とか、仏様とか、そーゆーのいるのか?
いるとしたらなんでだ、いないとしてもなんでだ。
救いがない。こんなのおかしい。

父子家庭の二人暮らし。
下のきょうだいと義父は、親子支え合って生きていたはず、なのに。
意味が分からない。

亡くなった原因は、誰を責めることもできない最悪なアクシデント。

因果とか意味なんてなく、只の運

責めるべき誰かがいないことで、より辛さが増す。
ずっと答えのない『なんで』を繰り返し、悲しみでいっぱいになる。

前世や現世での行いとか、
なんらかの因果とか、
起こったことの意味とか、
天罰とか功徳とか、
そんなもん何にもないんだな、と世の中の理が見えた

起きた事象への意味づけは、納得したい人間が勝手に後付けするもの。

じゃあ、善い人間に不慮のアクシンデントが起きた場合に、後付けできる意味はあるのか?

ない。そんなもん、一切ない

身近なところで言うと、
私の生まれてからの生い立ちや苦しみ、
世の中広いところで見ると、
病気になったり、苦しい思いをしている人、
逆に成功している人。
人人人。それぞれの人生。

それって、因果とか功徳とか、努力とかそんなんじゃなく、『たまたまの運』でしょ。
その状況に至るまでになんらかの意思や思惑、それぞれのストーリーがあるけれど、
それは最初からそうなるように運で決まってる。
どの遺伝子、どの時代、どの親、どの環境、どの仲間、どの能力、どの選択etcetc...

何かを得たとき、人はそれを自分の努力と思いたがるし、
何かを失ったとき、人はそれを何かの因果だと考えたがる。
でも、そのすべてに意味なんてない

運命

恨んでも、努力しても、神にすがっても、どうにも抗えないやつ。

運だ、運命だからと言って、義父の死に対する悲しみや、
下のきょうだいの不安、辛さ、悲しさがなくなる訳ではない。
生きる上で努力したり、運命に争うなということでもない。
人生には『どうしようもない運』があると言うこと、ただ、それだけ。

Q:人は人に対して何ができるか?
A:基本何もできない、ほとんどはエゴ

私もどうしていいか分からない気持ちだが、共に暮らす家族を失った下のきょうだいはもっと感情の整理がつかないだろう。
呆然、言葉も出ない、整理もつかないと思う。
辛い気持ちを抑えながら、感情を殺しながら私に連絡をくれた。

『父が亡くなった実感が湧かない』下のきょうだいはそう言った。

かける言葉が見つからない、という言葉が初めて理解できた。

『何かできることがあったら言って、後話したくなったら話は聞く』と言ってみたものの。
長く離れて暮らし、自分のこともままならない無力な私に何ができると言うのだろうか。
情けないな、自分。改めて、いざと言うときにしっかりしてない私。

それに、きっと話を聞いてあげても、同じ気持ちになってあげることもできない。
辛いことをなかったことにしてあげることも。
できるなら、全部なかったことにしてあげたい。

一番困っている人に、他人がしてあげられることは何一つない。

できることは何もない
ただ、気にかけている人がいると言うことは知っていてほしい。
解決にもならず、それはこちら側のエゴと分かりつつも

良いのか、悪いのか判断はつかなかったが、
私は上のきょうだいが丁度地元に帰るのと言う情報を聞き、
下のきょうだいと上のきょうだいが数十年ぶりに会えないかと画策をした。  

(私と上のきょうだいは、育った場所は違うが連絡は取り合う中だ。)

そしてその流れで、私たちの共通の母に繋がればそれはそれで良いな、と。

下のきょうだいは乗り気ではなかったが、一人にしておきたくはなかった
世界で父以外にも血が繋がった人間がいるのだと知って欲しかった。
何年も話してなくて、一緒に育ってなくても。
母はまともに込み入った話ができず、頼りにならなくても。

縁はあるはず

上のきょうだいは下のきょうだいに起きた不幸は知らなかったが、
面倒見が良い、優しい性格なので快く引き受けてくれた。

私自身が飛んで帰るわけでも、
下のきょうだいが望んでいることでもない、
良い効果を生むかどうかも分からないことだったが、お節介を焼いた

ただ、それを提案して受け入れるかどうかは、下のきょうだいに委ねた。
本人の気持ちは一番に尊重されるべきだ。
無理強いしても良いことはない。お互い大人だ。

結果としては、疎遠だった母とも会うことができ、少しは距離が縮まった。
また定期的に集まることはできそうだった。
上のきょうだいの図らいに感謝。

誰かを悼むとき、誰かが辛いとき、その事実には気づくが手を差し伸べることはできない。
何かしてあげたい、してあげなきゃと思うことすら、エゴかもしれない。
救い出すことは尚更無理。

神や仏はいない、人生は運だ、と分かりながらも、
私は、下のきょうだいの心の平穏を、これからの幸せをただ神に祈っている。(続く)